近年ではグローバル化の進展に伴い、企業が海外拠点を増やしたり、海外でのプロジェクトが増えたりしているため、海外赴任に帯同する子どもの数が増加傾向にあります。
そんな中、海外赴任中、子どもの日本の教育をどうするかという問題は、多くの家族が直面する課題の一つです。
私自身、ヨーロッパでの生活を始めた頃、在外期間中の子どもたちの日本の教育について悩んだことがあります。
とくに子どもが小学生になると、現地の教育システムと日本のカリキュラムの違いが大きく、帰国後に子どもが適応できるか不安を感じました。
この記事ではそんな経験から、海外赴任中における子どもの日本の教育の悩みと、その具体的な解決方法を整理して、メリットやデメリットを含めて解説していきます。
海外赴任中の家族が抱える子どもの日本の教育問題
よくある教育の悩みは、以下のものです。
- 日本語能力の低下
海外生活では、現地の言語に触れる時間が増えるため、子どもが日本語を使う機会が少なくなりがちです。
日本語の読み書きや会話力の維持が大きな課題です。 - 日本のカリキュラムとのギャップ
海外の教育システムでは、授業内容や進度が異なるため、日本のカリキュラムに戻った際に遅れを感じることがあります。
とくに国語や社会、日本の歴史など、日本独自の科目でギャップが生じやすいです。
また、理数系の教科についても、カリキュラムの進度や内容が日本の学校とは異なるため、帰国後に授業についていけなくなることも少なくありません。 - 帰国後の進学・受験の問題
帰国後に日本の学校へ復帰する際、とくに受験を控えている子どもには、日本の学力テストや進学制度への適応が大きな課題です。
日本の受験システムに早くから準備しないと、競争力が弱まる可能性があります。
我が家の子どもたちも、駐在期間が長くなるにつれて、だんだんと日本語を読むこと、書くことを嫌がるようになってきました‥‥
これらの課題は、最初は大丈夫でも、確実に出てくるように思います。
教育問題の解決方法とメリット・デメリット
海外赴任中でも、子どもの日本の教育を補完するための選択肢は以下の通りです。
ここでは、それぞれの方法のメリットとデメリットを交えながら紹介します。
日本人学校に通う
日本人学校は、海外に駐在する日本人の子どもたちのために設立された学校で、日本のカリキュラムに基づいた教育が行われます。
多くの日本人が住む都市には日本人学校があり、現地の生活と日本の教育を両立させることが可能です。
まず海外赴任が決まったら、日本人学校がある国であれば、日本人学校に通うのか、インターナショナルスクールや現地の学校に通うのか、本人の適性や親の意向などから選ぶことになるでしょう。
- メリット:
- 日本国内の学校とほぼ同じカリキュラムで授業が行われるため、帰国後の学習の遅れを感じにくい。
- 日本語による授業が行われるため、国語力や他の教科での日本語力を維持できる。
- 同じ日本人の子どもたちと学校生活を共有できるため、孤立感が少ない。
- デメリット:
- 日本人学校がある都市に限られるため、通学が難しい地域もある。
- 授業料が現地の公立学校と比べて高額になることが多い。
- 現地の文化や言語に触れる機会が少なくなる可能性がある。
我が家は夫婦共に、せっかく海外に出たら、まずは外国語を習得させたいという考えです。
8歳の姉は英語のインターナショナルスクールへ。
6歳の弟は現地の公立小学校へ。
5歳の妹は現地の私立幼稚園へ通っています。
今、駐在している国には日本人学校もあるので、もしそれぞれの学校でうまく馴染めなかった場合には、第二の選択肢として選べるのはありがたいなと思っています。
ここから下は、インターナショナルスクールや、現地校に通うお子さんたちに、とくに参考になる選択肢です。
教科書を取り寄せて親が教える
日本の教科書を取り寄せ、親が子どもに教える方法です。
国語や社会、日本の歴史など、日本独自の科目を親が直接指導することで、教育内容を補うことができます。
以下のリンクから、無償で教科書の取り寄せを行うことができます。
詳しい方法についてはこちらで確認してみてください。
- メリット
- 日本の学校の進度に合わせて学習できる。
- 親子のコミュニケーションが深まり、子どもに安心感を与えられる。
- 教材費のみで、コストが安い。
- デメリット
- 親が教える時間と労力が必要で、忙しい家庭では難しい。
- 専門的な教え方をするのが難しい場合がある。
- 子どもが親に甘えやすく、自主性を欠く可能性がある。
我が家は子どもが3人いて、この方法は確実に無理だと思ったので、最初から諦めていました…
とりあえず日本の教科書だけは、小学生の2人の子ども分、取り寄せて家に置いてあります。
無償なのでそれだけでも損はないですし、いつか役に立つかもしれません。
我が子達も、たまにペラペラめくっています。笑
日本語補習校の利用
現地にある日本語補習校は、週末や放課後に日本の教育カリキュラムに沿った学習を提供してくれます。
とくに国語や算数など、日本語での授業を行うため、帰国後の学習に大きく役立ちます。
- メリット:
- 日本の教育内容を体系的に学べる。
- 同じ立場の子どもたちと交流できるため、孤立感が少ない。
- 専門の教師による指導が受けられる。
- デメリット:
- 補習校がない地域もあり、通学に時間と費用がかかる場合がある。
- 授業料が高額になることがある。
- 週に数回しか通えないため、全ての学習をカバーできない。
我が家では、日本人のお友達ができると、外国語習得の妨げになるかなと思って、今のところ補習校には行かせていません。
逆に日本人のお友達が欲しい場合には良い選択肢だと思います。
現地の日本の塾や学習塾
現地にある日本の学習塾に通う方法です。
とくに都市部には、日本人向けに日本のカリキュラムに基づく塾がある場合があります。
ここでは、受験準備や補習授業が行われており、子どもの学力を維持するのに効果的です。
- メリット:
- 日本の受験や学力テストに対応できる専門的な指導を受けられる。
- 集中的な学習が可能で、短期間で成績向上が期待できる。
- 現地での生活と日本の教育を両立できる。
- デメリット:
- 塾が限られた地域にしかないことが多い。
- 授業料が高額になりやすい。
- 時間に追われる可能性があり、子どもにストレスがかかることがある。
授業料は高いですが、プロに教えてもらえる安心感はあります。
帰国後に受験をしたい場合は、こちらを選ぶと良いでしょう。
オンライン塾・オンライン家庭教師
オンライン塾やオンライン家庭教師を利用する方法です。
これにより、インターネットを介して日本の学習塾の授業を海外からでも受けることができます。
国語や算数、受験対策まで幅広くカバー可能です。
- メリット:
- どこに住んでいても利用可能で、地域に縛られない。
- 自宅で受講でき、通学時間が不要。
- 子どものペースに合わせた学習ができ、個別指導が可能。
- デメリット:
- ネット環境が不安定だと授業がスムーズに進まない場合がある。
- 画面越しの授業なので、対面でのコミュニケーションが不足しがち。
- 子どもが自律的に学習しないと効果が薄くなる。
通信教育の活用
通信教育は、郵送やオンラインで教材を受け取り、家庭で自主的に学習を進める方式です。
教材は日本国内のカリキュラムに沿って作られており、海外赴任中でも利用可能です。
- メリット:
- 自宅で好きな時間に学習できるため、スケジュールに柔軟性がある。
- コストが比較的安く、他の手段と比べて経済的。
- 自分のペースで進められるため、自己学習力を高めることができる。
- デメリット:
- 子どもが自己管理できないと、学習が進まない場合がある。
- 対話型ではないため、疑問点をその場で解決できないことがある。
- モチベーション維持が難しい場合がある。
我が家は、いろいろ悩んだ末、結局Z会のタブレット型の通信教育を選びました。
今のところ、順調に日本の教育についていけていて、学校との両立も問題なく、選んでよかったと思っています。
帰国子女ならではのメリット:帰国子女枠の活用
海外赴任中に得られる大きなメリットの一つが、「帰国子女枠」の活用です。
日本の多くの学校では、海外での経験を持つ子どもに対して特別な入試枠を設けています。
通常の受験とは異なる基準で評価されるため、海外経験が子どもの進学にプラスとなります。
- メリット:
- 海外で得た語学力や異文化理解が評価される。
- 一般受験に比べて柔軟な基準で入試が行われるため、帰国子女には有利。
- 帰国後に日本の教育環境にスムーズに適応できる体制が整っている。
- デメリット:
- 帰国子女枠を利用できる学校が限られている。
- 帰国子女枠でも競争が厳しい場合がある。
昨今の帰国子女枠での受験(とくに中学受験)は、日本の勉強もできなくてはならない場合も多く、求められる外国語レベルも高くなっており、非常に競争率が高いそうです。
また受験内容や受験資格は、学校によって千差万別。
もし気になったら、色々な学校の情報を早めに集めてみてくださいね。
海外生活で子どもの日本の教育をサポートする親の心構え
海外で子どもの日本の教育を補完するためには、親のサポートが不可欠です。
以下に、親としての心構えをいくつか紹介します。
- 無理をしないこと
親がプレッシャーを感じすぎると、子どもにもそのストレスが伝わります。完璧を目指さず、現地の生活と日本の教育をバランスよく両立させることが大切です。 - 日本語を意識して使う
家庭内で日本語を使う機会を意識的に作りましょう。
日常的に日本語で会話したり、日本の書籍を読むことで、日本語能力の維持に繋がります。 - 現地の教育も大切にする
日本の学習にこだわりすぎず、現地での多文化理解や言語習得も大切です。
現地の教育を尊重しつつ、子どもの学びを広げる心構えが大事です。
家での親子の会話は日本語を使うことで、子どもの心の安定にもつながりますよ。
まとめ
海外赴任中の子どもの日本の教育について、たくさんの課題や不安があるかもしれませんが、解決策は多く存在します。
日本人学校や補習校、オンライン塾、帰国子女枠の利用など、家庭の状況に合った方法を取り入れ、柔軟に対応することが大切です。
親がしっかりサポートすれば、子どもは新しい環境の中で力強く成長していきます。
そして何よりも大切なのは、親子で一緒に過ごす時間や経験が、子どもにとってのかけがえのない宝物になるということです。
海外生活はいつも苦労の連続かもしれませんが、その中で親子で共有する小さな日々の積み重ねが、子どもの心の成長に大きく寄与します。
海外での体験を通じて、子どもも親も一緒に成長し、新しい世界を切り開いていけるのです。
焦らず、楽しむことを忘れずに過ごしていきましょう!